肉離れを繰り返すのはなぜ? 再発を防ぐために確かめたいこと
「またやってしまった」。太ももの裏やふくらはぎを、二度、三度と同じ場所で痛めている方は少なくありません。しかも多くの場合、前回と同じような場面——ダッシュの出だし、切り返し、試合の終盤——で起きます。
肉離れが再発しやすいのは、運が悪いからでも、体が弱いからでもありません。繰り返すには理由があり、その多くは復帰のしかたに関わっています。
一度やると繰り返しやすい、という前提から始める
肉離れが多いのは太ももの裏(ハムストリングス)・ふくらはぎ・太ももの前・内ももで、この4か所でほとんどを占めます。年代では10〜20代の割合が大きく、部活動や競技に打ち込む時期と重なります。
そして押さえておきたいのが、再発しやすさそのものが、肉離れという怪我の性質だという点です。サッカー選手を対象とした複数の研究では、ハムストリングスの肉離れの再発率は15〜20%程度と報告されています。さらに再受傷の最も大きな要因として繰り返し挙げられているのが「過去に同じ場所を痛めた経験があること」で、既往のある方はリスクが2倍以上になるとされています。
つまり、一度でも肉離れをした時点で、すでに再発しやすい側にいるということです。だからこそ、復帰の判断を「なんとなく」で済ませないでいただきたいのです。
「痛みが消えた」は、戻ってよい合図ではありません
再発を防ぐうえで、ここが最も大事なところです。
痛みは、治り具合のなかでいちばん早く消える指標です。日常生活で痛まなくなっても、力の入り方、伸び具合、全力で走ったときの反応は、まだ元に戻っていないことがあります。損傷した部分には修復の過程で瘢痕(はんこん)組織ができ、周囲の筋肉が力を出すことをためらうような状態が残ることもあります。
とくに注目されているのが、筋肉が伸ばされながら力を発揮する働き(遠心性収縮と呼ばれます)です。ダッシュで脚を前に振り出し、地面に着く直前にブレーキをかける——この局面で太ももの裏には大きな負担がかかります。ここが戻りきらないまま全力で走れば、同じ場所に同じ負担が集中します。
痛みが引いた時点はスタート地点であって、ゴールではありません。復帰の可否は自己判断で決めず、診てもらっている医療機関の指示に従ってください。
傷めた筋肉だけを見ても、繰り返すことがあります
もうひとつ、見落とされやすい視点があります。
なぜ、その筋肉にそれほどの負担がかかったのか。
走る・跳ぶ・切り返すという動作は、足で地面を踏んだ力が足首・膝・股関節・体幹へと順に伝わって生まれます。このつながりを運動連鎖と呼びます。連鎖のどこかが動きにくくなっていると、その分を別の場所が肩代わりします。
- 股関節を後ろへ伸ばす動きが出にくい 本来そこで生む力を太ももの裏が余分に負担し、ハムストリングスに負荷が集中しやすくなる
- 足首が硬い、着地が不安定 地面からの衝撃を足首で吸収しきれず、ふくらはぎが受け止める量が増える
- 体幹が支えきれずに骨盤がぶれる 脚を振り出すたびに骨盤の位置が変わり、太ももの裏が伸ばされる量が一定にならない
こうした状態が残ったまま復帰すれば、傷めた筋肉そのものがどれだけ回復していても、また同じ場所に負担が集まります。痛めた場所は結果であって、原因は別のところにあることが珍しくありません。この考え方についてはスポーツ障害・コンディショニングでも詳しくご説明しています。
こんなときは、医療機関で診てもらってください
次のような場合は、セルフケアで様子を見ずに整形外科を受診してください。
- 受傷直後で、体重をかけて歩けない・脚を引きずる
- 断裂したような音や感覚があった、へこみが触れる
- 内出血が広がっている、腫れが強い
- しびれや感覚の鈍さをともなう
- ふくらはぎの痛みに加えて、脚のむくみや強い張りが続く
肉離れは程度によって復帰までの期間が大きく変わります。自己判断で「軽いから大丈夫」と決めず、まず状態を診断してもらってください。
復帰前に、自分でも確かめておきたいこと
医療機関の指示を前提としたうえで、戻る前に自分でも確認しておきたい点をまとめます。ひとつでも引っかかるなら、その状態を担当の方に伝えてください。
- 傷めた場所を押したときに、残っている痛みや違和感がないか
- ストレッチで伸ばしたとき、左右で伸び具合に差がないか
- 力を入れたときに、左右で同じように入るか
- ジョグからスピードを段階的に上げていく過程で、不安を感じる速度がないか
- 全力に近い動きで、無意識にかばう動きが出ていないか
最後の「かばう動き」は自分では気づきにくいので、動画を撮って見比べるか、周りの人に見てもらうのが確実です。「行けそうな気がする」という感覚だけで判断しないこと。再発の多くは、この一歩を急いだところで起きています。
再発を防ぐために取り入れたいこと
ここからは、痛みが引き、医療機関から運動を再開してよいと言われている段階で取り入れたいものです。回復の途中で始めないでください。動かしている最中に痛みや違和感が出たら、その場で中止してください。
前の章で触れたとおり、鍵になるのは伸ばされながら力を出す働きです。柔軟性を戻すだけでは足りません。なお、その筋肉に負担を集めている別の場所については、どこが動きにくくなっているかによって必要なものが変わるため、ここでは扱いません。
柔軟性は「左右差が残っていないか」で見る
痛めた側だけが硬いまま復帰すると、同じ動作をしても伸ばされる量が左右で変わります。ここで大事なのは、どの種目をやるかよりも、左右に差が残っていないかを確かめることです。
前屈でも、仰向けで脚を上げる形でも、普段やり慣れたもので構いません。必ず痛めた側と反対側を見比べて、差が残っていると感じたら、その状態を担当の方に伝えてください。数字で測れなくても、「反対側より突っ張る感じがある」で十分な情報になります。
シングルレッグ・ルーマニアンデッドリフト(太ももの裏)
片脚で立ち、股関節から折って上体を前へ倒す種目です。太ももの裏が伸ばされながら体を支えることになるので、この記事で触れてきた伸ばされながら力を出す働きを鍛えられます。片脚で行うぶん、左右の差もそのまま出ます。
片脚で立ち、支えている側のひざは軽くゆるめます(伸ばしきらないでおきます)。背中をまっすぐ保ったまま、反対の脚を後ろへ伸ばしながら上体を前へ倒します。上体と後ろの脚が地面と平行になるところが目安です。太ももの裏に伸びを感じたら、お尻を締めて戻ります。左右8〜10回を2セットが目安です。
ふらつくときは、壁や椅子の背に片手を添えてください。慣れるまでは無理に深く倒さず、背中がまっすぐ保てる範囲にとどめておくと安全です。
リバースノルディックカール(太ももの前)
太ももの前(大腿四頭筋)を痛めた方向けです。ひざ立ちから後ろへ倒れていくことで、太ももの前が伸ばされながら耐える形になります。
ひざ立ちになり、腕を胸の前で組みます。頭からひざまでを一直線に保ったまま、お尻を締めて、耐えられるところまでゆっくり後ろへ倒れていきます。支えきれなくなったら、手を後ろについて受け止めて構いません。5〜10回を2セットが目安です。
腰が反りやすい種目なので、お腹に軽く力を入れて、体が一直線のまま動くようにします。はじめは倒す角度を浅くして、体の反応を見ながら調整していくと続けやすくなります。
カーフレイズ(ふくらはぎは「下ろす」動作をゆっくり)
ふくらはぎを痛めた方向けです。かかとを上げることより、下ろす局面をゆっくり行うことが目的になります。
壁などに手を添えて立ち、かかとをゆっくり上げます。上げきったところで一度止め、4秒ほどかけて下ろします。15回を2〜3セットが目安です。慣れてきたら片脚ずつ、さらに段差に立って、かかとを段の下まで下ろす形にすると負荷が上がります。
ふくらはぎの肉離れは、等尺(動かさずに力を入れる)→ 下ろす動作 → 通常のカーフレイズ → ジョグ → ダッシュ、と段階を追って戻すのが一般的です。ひとつずつ順に進めることが、結果的にいちばん早い戻り方になります。
一宮市で、繰り返す肉離れの相談先として
同じ場所を何度も痛めている方の場合、傷めた筋肉のケアだけでは足りないことがあります。その筋肉に負担を集めている別の場所を探すところから始める必要があります。
当院では、理学療法士で元Jリーグトレーナー(FC岐阜)の院長が、痛みのある場所だけでなく身体全体のつながりを確認したうえで施術を行っています。復帰後に同じ場所を痛めないための動き方やエクササイズも、必要に応じてお伝えしています。曜日により異なりますが、夜は23時まで対応していますので、部活や仕事が終わってからでもお越しいただけます。